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河里一伸ぐうたらブログ

エッチぃ小説を書いている作家の河里一伸です。 このブログでは、自著の紹介と裏話を書いていこうと思います。あまり更新しませんが、よろしければ見ていってください。

淫獄の罠

 このブログでも何度か書いているとおり、特選小説での私は、ラブロマン文庫とは異なる凌辱寄りのものを書いています。
 今作も、その流れでアイデアを作ったのですが、最初は「ヒロインが親友を救うために自分の身体まで差し出したのに(媚薬を飲まされていたため受け入れてしまった)、肝心の親友はセックス中毒になっていて救出を拒み、さらに自身の痴態もビデオ撮影されていた」という感じのあらすじでした。
 このように、基本的なアイデアを作った時点で、本作はヒロインにとって救いのないものにしよう、というのは決めていました。河里一伸はどこまでダークなものを書けるか、という挑戦みたいなことをしてみたかったのです。
 基本アイデアに「ビデオ」と書いてあるので分かるかと思いますが、もともとは現代を舞台にこの話をやろうと思っていたんです。しかし、携帯電話もあって防犯カメラもそこかしこにある現代の東京で、人が行方知れずになったのに騒ぎにならないで済むでしょうか? 自ら姿を隠したにしても、まったく音信不通になったら、それこそ友人がTwitterなどSNSでの情報提供を呼びかけたりして、あっという間に騒ぎが広がる可能性があります。
 ちなみに、この基本アイデアの時点では、ヒロインも親友も社会人にしていました。社会人なら姿を消しても自己責任、と考えることもできるかな、と思ったので。
 ただ、どうもしっくり来なくて、どうしようかと悩んでいたときに、ちょうど特選小説の編集部で打ち合わせをすることになったんです。で、担当氏と打ち合わせをしている最中、なんの弾みだったか、特選小説の昭和特集のような話が出たんですね。確か、他のアイデアについてあれこれ話していたときだったと思いますが、細かくは覚えていません
 とにかく、「昭和」というワードが出たとき、私の頭の中でこの作品の原型となったアイデアと時代とのマッチングが起きて、「これだ!」と閃いたわけです。そして、その場で1964年の東京オリンピックの時代にすることを決めました。
 同時に、ヒロインを大学生にすることなども決めて、もう一気にプロットまで進んだ感じでしたね。
 しかし、その後しばらく、こちらの原稿に手をつけることができず、1月号に間に合うようには書けませんでした。もっとも、2018年1 月号の特集は「忘れられない想い出…昭和人妻エロス」 だったので、どのみちこの作品は対象外でしたが
 1964年の東京オリンピックの時代にしたのは、2020年の東京オリンピックがあるのはもちろんですが、東海道新幹線の開業や東京オリンピックの開催と言った明るい話題が多い時代の陰で、もしかしたらこういう暗い事件が新聞沙汰になることもなく起きていたかもしれない、という考えもありました。
 
 さて、キャラクターについてですが、まず美子については、勝ち気な女性にすることを最初から決めていました。行方不明になった親友を心配し、探しまわる行動力の持ち主なので、とにかく快活な女性にしようと思ってキャラクターを作りましたね。
 また、東京オリンピックの頃は、まだ戦前の考えと戦後の男女平等の考えが入り混じっているあたりなので、積極的に社会に出て仕事をしようと思いつつ、貞操観念は昔ながらの感じでも違和感はないだろう、というのもありましたね。そういう意味でも、時代をここに設定したのは正解だった、と思っています。
 夏江に関しては、設定は作ってありましたが、出番がもともとあまりない予定だったので、基本的に美子と馬が合って親友だったというだけで問題ないかな、と。
 なお、美子とか夏江という名前は、時代背景を考えて付けました。この頃だと、女性には無難な名前を付けているでしょうから。
 毒島は、ヤクザの親分なので、ワルっぽい感じは最初から考えていましたが、筋肉ゴリラではなく比較的インテリヤクザっぽいイメージで考えていました。取り締まりが厳しくなっている中、頭を使って立ち回らないと警察に潰されると思ったので。
 
 そんなワケで、竹書房ラブロマン文庫の原稿が終わってから執筆に取りかかったのですが、時代背景もあってこれはかなり苦労しました。
 何が大変だったかって、まずは言葉遣いです。現代では当たり前でも当時はほぼ使われていなかった言葉、逆に当時は使われていたものの現代ではほとんど使われなくなった言葉があるので、まずそこらへんを気にしなくてはなりません。
 そして、枚数の問題ですね。現代ではないので、多少なりとも時代について書かなくてはならなかったのですが、何しろ短編なので余計なことを書くとあっという間に規定枚数をオーバーしてしまいます。時代について最低限は触れつつ、いかにコンパクトにするかで非常に苦労しました。
 それでも、粗入力をしただけでほぼ規定枚数に達してしまい、朱入れをしてボリュームが増えたら10枚以上もオーバーして、さすがに頭を抱えましたよ。とはいえ、文章どころか文字単位で見直して少しずつ削っていき、完成稿で無事に規定枚数に収めることができましたが。
 まぁ、そのあと当時の担当氏から鋭いツッコミを受けて、そこそこ書き直しましたけど、おかげでかなり完成度が上がったと思っています。
 ちなみに、美子が盛られた薬については詳細を書くのを避けましたが、基本的にはLSDを参考にしました。純粋なLSDだと、効果が異なるので、イメージとしてはLSDをベースにした薬、という感じですね。
 長編なら、この絶望的な状況からの逆転があるのか、それとも美子も完全に堕ちてしまうのか、というところを書くのでしょうが、あいにくとこれは短編なので、本文のところでおしまい。先のことは、読んでくれた皆さんでそれぞれ想像していただければと思います。
 
 なお、当時の担当氏は2月末付で退社されることになり、私の担当は本作が最後ということになりました。お若いながら、鋭いツッコミをいくつももらい、こちらも本当に勉強になりましたし、とても感謝しています。

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