甘々路線からの転向第3作目となった本作ですが、「催眠術」「媚薬」と来て次に何を使うか、打ち合わせでの担当氏との話し合いはかなり難航しました。
で、打ち合わせの最中に「アプリで人を操る」というアダルト漫画の話題がポロッと出たワケです。あ、某週刊漫画雑誌に載ったのとは違いますよ(^_^; 打ち合わせの時点では、あれはまだ連載が始まっていませんでしたし、あくまでも「アダルト」漫画です。
ただ、美少女文庫ならそのネタのままでもありだったのでしょうが、大人向けの黒本ではいささか荒唐無稽すぎるというか、子供っぽい印象を与えかねないため、これは却下。しかし、「アプリを使う」という点だけは「いいかも」という話になりました。
私としては、MCに持っていきたいという気持ちもあったのですが、担当氏がなかなかいい顔をしてくれません。それでも、アプリを使って相手を言いなりにできるとしたら……弱味か!
人には言えない秘密を抱えた女性の秘密をネタに脅して関係を持つ、というのは脅迫物の定番です。それを、スマートフォンのアプリを使ってやらせたら、面白いのではないか?
そんな感じで話がまとまり、「人の心の奥にある秘密まで暴く謎のアプリ」という設定ができました。
なお、アプリの制作者に関してはまったく触れていませんが、それは担当氏からの要望もあります。私は、とかく色々と裏設定を作りたがるのですが、そうすると説明過多になりがちなので、とにかく「人の心を読める謎のアプリが手に入った」という事実があればいいということで、裏設定みたいなものはまるっきり放棄しました。
まぁ、裏の裏でちょっと考えたことはあるのですが、それはここで書くのは控えておきましょう。
とにもかくにも、そのアプリの大まかな設定と、キャラクターのバリエーションだけ打ち合わせで作り(この時点で4人と決まっていました)、あとはプロット作りです。
しかし、ここでちょっと苦労しましたね。
綾音に関しては、実はプロットの第1稿だとソープ嬢にしていました。それくらいじゃないと、あんまり夫に秘密にしたがらない(打ち明けても事情が分かれば許される)と思ったんですよ。
ところが、担当氏から「ソープ嬢だとヒロインとして魅力がない」という意見がありボツ。で、綾音の仕事先をあれこれ考えたものの、前述の通り「キャバ嬢くらいじゃ夫に秘密にしたいと思わないだろうなぁ」と思って、すっかり行き詰まってしまいました。そんなとき、担当氏から「夫の側に、その手の店で働いていた女性を受け入れられない事情を作ったらどうか?」という意見をもらい、目から鱗が落ちたような感覚になりました。で、茶道の名家の次男坊という設定ができたわけです。
とはいえ、普通のキャバクラだと説得できてしまいそうな気がしたので、下着姿で接客をするセクキャバで働いていたことにしました。
あと、樹里もプロットの第1稿から設定をかなり変更したキャラですね。
第1稿では、樹里はレズっ気があって、美春のことが生徒としてではなく恋愛対象として見ている、ということにしていました。だからこそ、その秘密を暴かれると敦志には逆らえなくなる、ということですね。
しかし、担当氏から「レズキャラは読者受けがよくない」と却下され、そこは完全に削って「お互い一人っ子なので姉妹のような」という感じにとどめました。ただ、その程度だと指摘されて逆らえなくなる秘密じゃないですよね。
そうして思いついたのが、「高校時代に水泳部で競っていた友人に偶然を装って怪我を負わせた」というものでした。
そこまでする気はなかったものの、魔が差してやったことが極めて重大な結果になったら、ましてそれが人一人の人生を大きく狂わせたとなれば、やった本人の心には大きな傷が残って当然でしょうからね。そこを突かれたら、マゾっ気のある人間なら逆らえなくなるでしょう。
こうして、この二人の設定が固まり、合わせて内容も変更してプロットが固まりました。
美春と成美の設定に関しては、プロットの第1稿からほとんど変わっていません。
ちなみに、美春の「ネットで裸の写真を売っている」というのは、キャラクターの年齢が固まった時点で思いつきました。ヒントになったのは、一部では知る人ぞ知るって感じの人が、無名の頃に裸の写真などをネット上にアップしていた、という話です。まぁ、顔を出していたらそりゃ今の時代どこかの段階でバレるよね、という思いはあって、そこらへんが美春の設定に繋がりましたね。
成美については、最初の段階ではどういうものがいいか迷いました。正直、会社の金の横領みたいなことも考えましたよ。しかし、なんかイマイチでどうしようかと悩んでいたとき、前に警備員をしていた知り合いから万引き常習犯の老婆の話を聞いたことを思いだし、「万引き癖っていいんじゃね?」と思いついたのです。
あとは、どういう理由でそういうことをするようになったかを考えて、単なる女社長ではなく「夫の急逝で社長になったものの、会社の業績が右肩下がりで密かに強いストレスを抱えている」という設定をつけました。
敦志に関しては、「リストラされたフリーター」というのは打ち合わせ時から決まっていましたね。
なお、今回は「アプリを使って脅迫」というのが肝ですが、同時に「脅迫する→関係を持つ→堕とす」とパターンがどうしても似通ってしまう危惧は最初から抱いていました。それだけに、上記の通り「暴かれる秘密」の部分と堕ちるポイントについて、各キャラごとに工夫をしてみたのですが、どうだったでしょう?
ちなみに、アプリに「無料使用は5人まで」という制限を設けたのは、実は本文を書き出してからです。設定段階では、「限定1名で無料使用できる」で充分かと思っていたのですが、いざ書いてみるとどうにも便利すぎて、「これ、制限がなかったら身近な女性相手じゃなくても、ガンガン使っちゃうよな」と思って、5人までの制限をつけた次第。
4人にしなかったのは、5人のほうが区切りがいいから、という単純な理由です

普通、制限をつけるとしたら限定1人か5人までか、それくらいでしょうからからね。不自然にならない人数制限を設け、超えた場合は1人あたりに課金が必要になる、という形にしたのは、個人的に正解だったと思っています。
主人公の敦志じゃないですけど、こういうアプリが実際にあって本当に人の秘密を暴けると分かっていたら、大枚をはたいても目的の人間に使おう、と思うのではないでしょうか? まぁ、そう思わせるための無料使用権でもある、というところでしょうかね。
そうして本文の第1稿を書いたのですが、この段階ではプロローグがかなり長めでした。しかし、これに関しては改稿時に「なるべく短く」と指示が出て、1行単位でチマチマ減らしてみたものの、担当氏の要望には程遠い枚数……さんざん悩んだ末に、特にプロローグでその場には出てこない成美に関する記述を、彼女が出てくる章にゴッソリ移してプロローグでは必要最小限の記述にとどめることで、ようやくなんとかなったわけです。
あと、第1稿ではもっとアプリの名前を出していたのですが、「なるべく少なくするように」と注意を受けました。アプリの存在をあまり強く意識させると、読者が醒めてしまうということですね。
しかし、ページ数を抑えつつ4人もキャラを出したため、バランスには苦労しました。
また、今回は「ポルチオ性感帯」への刺激を主人公の武器にしました。ただ脅迫して従わせるだけでなく、女性を快楽の虜にしてしまうためには、敦志を忘れられなくなる強烈な刺激を肉体に与える必要がなる、と考えたわけです。
ただし、そればかりでは飽きてしまうと思って、美春は経験不足でポルチオ性感帯では感じられず、樹里は経験不足の痛みを逆に快感として受けとめる、という感じに工夫はしてみました。
あと、成美は万引き癖を治すため敦志とのセックスの快楽に依存した感じにして、純粋にセックス中毒状態になってしまった綾音との差を出してみたつもりです。
一応、ここらへんでは私の趣味であるMC(マインドコントロール)みたいな雰囲気を意識しました。調教というのも、MCにかなり近いものがありますからね。
あとは、皆さんに気に入っていただければ幸いです。
設定上の遊びについては、わざわざ隠す必要もないのかも知れませんが、一応は下記の「追記」で打ち明けます。
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